VOICES
本とアート
Writer: 和田真依
会田大也|ミュージアムエデュケーション的体験のデザイン
VOICES
Writer: 和田真依
会田大也|ミュージアムエデュケーション的体験のデザイン
最初に会田先生は、社会とアートという議題の中でアートについて、何かの役に立つという理由で存在するのではなく、結果として何かの役に立つことはあるが、それ自体が自立しているものであると定義されました。それを踏まえ、講義後のディスカッションでは日本におけるアートの立場、意味合いについての議論が大半を占めましたが、結果として私の印象に残ったのは、アートという概念に対する日本人の混乱でした。アートというのはそもそも輸入された概念であり、日本における美術は主に用の美に対して用いられてきました。その文脈から、現代においても日本人がアートを語る際最も注視するのがその「目的」なのです。それは何も用途に限った事ではなく、例えばアートが教育やまちづくりの一環としてどう機能するのか、などの議論もその一つと言えます。しかしアートが世界に対して真に自立した存在であるならば、生まれた背景やアイデア、そのストーリーを含め、そこに存在することに意味がある事になります。ディスカッションを通じて、この存在の価値というものが日本人のアートに対する戸惑いのコアにあるのだと感じました。この国がアートの持つただ存在するという価値を理解し、そこに用途という論点を持ち込まずに語れるようになるまでは、おそらく長い時間を要するでしょう。そしてそれは同時に、正に今の私たちのアクションの一つ一つが日本のアート概念の形成を担っているということを示すのではないでしょうか。
PROFILE
私は絵描きであり、2017年に京都精華大学の洋画科を、2019年にロンドン芸術大学大学院(UAL)Painting 学科を卒業しています。(www.maiwada.com)華道、嵯峨御流を京都で5年ほど勉強しており准師範を持っています。三味線も少し嗜みます。英語が好きで大学院卒業後も毎日一時間オンラインでネイティブの方と話すことを続けています。また、city designにも興味があり、今現在兵庫県龍野市のNPOで働きながらまちづくりを学んでいます。CHISOUで学びたいこととしては、私はロンドンに2年間住んでいる間に本格的なアーティスト活動を始め、ロンドンの街で人々に受け入れられたという自負がありますが、日本での自分のアーティストとしての存在意義は非常に曖昧です。日本という国においてアーティストがどのように社会や人と関わり世界を構築して行けるのか、またこれから日本に特化した新しい形のアーティストという概念を作り出して行くとしたらそれはどのようになるのか、その可能性を探りたいです。