CHISOU

VOICES

小さな力をたくさん集めること

Writer: 宰井琢騰

西山厚|〈奈良〉の信仰と美術──歴史はすべて現代史である

小さな力をたくさん集めること。印象に残ったのはこのフレーズでした。
手塚治虫の漫画『ブッダ』の作中、悟りを得るシーンで無数の小さな命のかけらが集まって一つのものに還っていく場面があります。
それを思い出しながら講義を聴きました。
仏像建立の裏側には、死の深い悲しみや鎮魂がいつもあったということも印象的でした。
聖武天皇は、「富と権力を行使して大仏を建立する」と言った。
その一言には実は広がりがあって、その力の使い方に今回の講義のポイントがあるように感じました。
つまり、富と権力という言葉を、影響力という言葉に置き換えるなら、聖武天皇はその影響力を、「持たざる人=一枝の草や一握りの土を携えて協力を願い出る人」に目を向け、見つけ出し、関わりを生み出すために使ったということです。そして、力は小さくとも気持ちを携えた人が集い、力を合わせたものは尊いのだと。
「造っている間も1日に三度、盧舎那仏を拝みなさい」とした聖武天皇は、大仏建立の一大プロジェクトを作業的なものではなく、仏像建立を通して仏と個人の一人ひとりがパーソナルな関係を結ぶこと、そのことに重きを置いたのではないかと考えました。それは今の言葉で置き換えると、「行為に気持ちを込める」ことを重んじる感覚に近いように、私は感じました。

  • Update: 2020.09.16 Wed.

PROFILE

宰井琢騰

祖父の撮っていた大量の写真から昭和30年代神戸三宮の街の様子や夜の繁華街に興味を持ち、当時を知る高齢者や飲食店に趣味で聞き取り調査をするうちにローカルを掘り下げることやまちづくりに興味を持ちました。現在はたつの市で空き家問題を解消するためのNPOに従事。空き家調査と並行して、捨てられる運命にある古家具や廃材を新しい家具へ転用する取り組みをしています。週の半分はコミュニティバーでマスターをしています。CHISOUを通じてローカルの興味深い事柄や歴史に出会った時の読み解く解像度を上げたい。創造的なアウトプットの発想法を学びたい。

REFERENCES

講座について

LECTURE OUTLINE

  • ラボメンバーコース
  • ゲストコース

西山厚

〈奈良〉の信仰と美術──歴史はすべて現代史である

2020年8月30日(日) 14:00–16:00

CHISOU lab.

仏教美術史の第⼀⼈者で、奈良国⽴博物館名誉館員の⻄⼭厚さんをお迎えし、かつて⼤陸との間で⼈的・物的交流が頻繁に⾏われる中、疫病や天災、争乱など困難な出来事を経て育まれてきた奈良の⽂化芸術に焦点をあて、地域のコンテクストを現代史的視点から読み解く⽅法について学びます。

西山厚
仏教史・仏教美術史/半蔵門ミュージアム館長/帝塚山大学客員教授

1953年徳島県生まれ、奈良県在住。奈良国立博物館の学芸部長として「女性と仏教」など数々の特別展を企画。現在は半蔵門ミュージアムの館長を務める。奈良と仏教をメインテーマに、人物に焦点をあてながら、様々なメディアで生きた言葉で語り書く活動を続けている。