CHISOU

VOICES

アイデアをよりよい作品にするための協働

Writer: 西尾美也

Studio Kentaro Nakamura[仲村健太郎&小林加代子]|翻訳とサンドイッチ──多を束ねること、他につなげること

仲村さんと小林さんのお仕事には、アートプロジェクトにおけるアーティストのスタンスと共通するものが多く見受けられた。例えばそれは、モノではなくコトを生み出すこと、精神の表現者としてではなくメディエーターとして地域に介入すること、など。かれらはそれをグラフィックとウェブサイトの分野で、単にかっこいいデザインの提示ではなく、カウンセラーのようにクライアントに向き合いつつ、最適な解を見出していくことによって体現している。昔、芸大の先生が講評会でよく口にしていたことを思い出す。「同じ作品/アイデアを自分が展示したらもっといい作品になる」。つまり、展示経験の少ない学生に対して、見せ方に対して思索や探求が足りないことを指摘しているわけだが、学生を指導する立場になった今、全く同じことを自分自身も思うことが多い。芸大は放任主義だったが、県立大にはそもそも芸術を志して入学する学生はほとんどいないために、僕は半分カウンセラーのような形で学生に接している。アートプロジェクトがそもそも作家性を脱構築するものであると考えれば、さまざまな協働によって表現が体現されていくことは、何ら作品性を損なうものではないからだ。これは学生に限ったことではなくてアートプロジェクトの実際の現場にも当てはまる。つまり、他者と協働することで、同じ作品/アイデアがよりよい作品になるのであれば、アイデアを独り占めせずに、積極的に協働を働きかけるべきだろう。仲村さんと小林さんのカウンセラー的なあり方は、グラフィックやウェブサイトに限らず、アートプロジェクト自体の見せ方の可能性を広げる存在としても心強いものだと感じた。また、おそらく一度そのように協働すると、別のプロジェクトでお二人と一緒にならなかったとしても(あるいは今回のようなレクチャーを受けるだけでも)、仲村さんと小林さんならこんな疑問を投げかけてくるかもしれないと、お二人の視点のわずかでも内面化することができそうだと感じる点で、お二人は協働を通して、学び合いの場もまた実現している。CHISOUのアーカイブ制作では、お二人から学んだことを素直に活かすことが重要になりそうだ

  • Update: 2021.01.10 Sun.

PROFILE

西尾美也

1982年奈良県生まれ、同在住。美術家/奈良県立大学准教授/CHISOUディレクター。装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目したプロジェクトを国内外で発表。近年は公共空間へアプローチを行う大規模な作品に取り組む。奈良市アートプロジェクト「古都祝奈良」ではプログラムディレクターを務めている。

講座について

LECTURE OUTLINE

  • ラボメンバーコース

Studio Kentaro Nakamura[仲村健太郎&小林加代子]

翻訳とサンドイッチ──多を束ねること、他につなげること

2020年12月12日(土) 14:00–16:00

CHISOU lab.

人に伝える媒体として、書籍からウェブといった幅広い分野のデザインを手がけるStudio Kentaro Nakamuraの仲村健太郎さんと小林加代子さんをお招きし、情報とどう向き合い対応していくか、出来事とアーカイブを紐付けする技法について学びます。

Studio Kentaro Nakamura
仲村健太郎&小林加代子

デザインを視覚的な言語として捉え、伝える対象を把握すること、解釈して比喩してみること、説き明かすことと表現することのバランスを大切にしている。また、編集的な視点で紙からウェブまで領域を横断して取り組んでいる。

仲村健太郎(ブックデザイナー/グラフィックデザイナー)
1990年福井県生まれ、京都府在住。
小林加代子(ウェブデザイナー)
1990年兵庫県生まれ、京都府在住。